れんこん(蓮根)




スイレン科ハス属

品種改良を重ね 今の味わいに!!

 
昔のれんこんは糸を引いたのに、近頃のものは糸を引かないと言います。これは昔のれんこんが日本の在来種であり、最近はほとんどのものが中国種になったためです。 シャキシャキした歯切れのよさを活かす料理方法と、煮込んだり蒸したりして、食感を楽しむ場合と2通りありますが、ともに捨てがたい味わいです。かみ心地だけでなく、栄養・健康面でも積極的にとり入れたい野菜です。

 れんこんは中国原産とも、エジプト原産とも言われています。夏、運河や池などに美しく咲くハスの肥大した地下茎です。
 古代インドでは神がハスから誕生したという神話から、聖なる花、吉祥の象徴とされ、種が多い事から多産・神秘のシンボルにもなっています。また、仏の座がハスの花になっている蓮華座(れんげざ)はインド各地で出土しており、日本にもこうした蓮華装飾や仏像芸術が伝わり、多くの文様にもその片鱗が残っています。
 日本では10世紀には食用にされたという記録も残っていますが、現在の在来種は、奈良時代以降に中国から伝えられたものが各地に広まっていったものと推定できます。ただこの在来種は収穫量が少なく、現在市場に出回るほとんどのれんこんは、明治以降に中国から導入された中国種です。在来種に比べてふっくらとしていて肉あつですが、味は在来種のほうが良いといわれています。

<品種>
 れんこんは食用にする為の栽培のほか観賞用の栽培がありますが、観賞用の栽培の場合は花の色・形・弁数などの変った品種が注目され、江戸時代には花バスの品種を記載した蓮譜が出版され、100以上の品種が記載されています。
 食用としては在来種と中国種とに大別され、それぞれに多くの品種があり、各産地ではその地独自の在来品種を栽培している例も多く、れんこんの品種分布は複雑になっています。

《在来種》
 スラリと細長く、幾分茶色がかった肌色をしていて、地下茎が深く、収穫量が少ない為、現在では関東・東海地方の一部で栽培されている程度です。中国種に比べると粘りがあり、切り口から糸を引きます。
 また、金沢の加賀れんこんは在来種を品種改良したもので、やはり粘りがあるので、すりおろして蒸し物にしたり、だんごにして煮たりします。

《中国種》
 明治時代初期に中国から導入されたれんこんで、地下茎が浅く伸び、ふっくらと太いので掘り出しやすく病気に強い為、在来種に変って主流になりました。
 シャキッとした歯ごたえがあり肉厚なのが特徴です。酢の物や和え物、炒め物、ひき肉やエビのすり身を詰めて揚げたりする、れんこん料理全般に使われます。
 全国生産量の30%を占める茨城県では、肥大がよい中国種が栽培されています。


<栽培法及び出回り時期>
 れんこんは、3節ほどついた種バスを3〜4月に植え付けます。種バスの先の芽はやがて葉を水上に出し、地下茎は枝分かれしながら伸び、葉を開き、夏から秋にかけて地下茎の先の3節ほどが肥大します。これを8月から翌年の5月まで続けて収獲をするのが、最も一般的に行われている栽培方法です。
 12月のおせち料理の時期が最盛期で、逆に6〜8月が端境期となりますが、この間はハウスを使った促成栽培も行われ、1年中市場に出回ります。

<新れんこん>
 ハウス、トンネル栽培で、早期収獲し、6月下旬頃から出荷されるものを市場では「新れんこん」と呼んでいます。
 肉質が柔らかく、やや小さめ。日持ちがしないので、購入したら出来るだけ早めに調理することが必要です。


<れんこんは今からが旬>
 正月の食べ物と言うイメージが強いのですが、ハス田一面に大きな葉が重なって波打つこれからが収獲時期。市場には地元産のれんこんが数多く出回り始めました。
 加賀れんこんは5代加賀藩主前田綱紀が、参勤交代の時に美濃からハスの苗を持ち帰り、金沢城内に植えて花を楽しんだことが始まりと言われています。それを大樋町の喜兵衛という人が泥田に移植したところ、びっくりするほどよく成長した為、金沢の北部地区一帯に広まったと言われています。


<選び方>
 自然な色でふっくらとした物を!!
 かつてれんこは白く漂白されて出荷されていましたが、最近は漂白されていない自然な肌色がかったものが中心です。
 全体に乾いた感じのものや、穴の中が黒ずんでいるものは古くなった証拠なので避けましょう。一番美味しいのは芽に近い節の部分です。
 なお、赤い斑点は鉄を多く含む土壌で育てられたもので、味に影響はしませんが、そうした所では、早く葉柄を刈り取って鉄さびがつかないようにしています。


<保存方法>
 丸ごと保存する場合は、濡らした新聞紙に包み、さらにポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存すれば4〜5日は持ちます。
 切ってしまったれんこんは密閉容器に入れ、れんこんが全部つかるように水を張って冷蔵庫で保存します。こうすると変色は防げますが、ビタミンCが流出するのでせいぜい半日〜1日で使いきるようにしましょう。
 半分ほど残った場合は、切り口をラップでぴったりと覆っておくと変色は防げますが皮をむいてしまったものは、水につけて保存したほうが良いでしょう。


<調理のコツ>
シャキッと仕上るには加熱し過ぎは禁物!!
◆アク抜き◆
 れんこんは切ったらすぐに酢水に放してアク抜きをすることが白く仕上るコツです。
 これはれんこんに含まれるポリフェノール系物質の酸化を防ぐ為ですが、酢はれんこん特有の粘り成分を変化させて、歯切れをよくする働きもあります。長くつけすぎると風味がおちてしまうので、せいぜい10〜15分程度にしましょう。

◆ 切り方◆
 酢れんこんやサラダにする場合は、輪切りや半月切りにします。煮物にする場合は縦半分〜1/4に割ってから大きさを揃えて乱切りにします。こうすると味の含みがよくなります。
 れんこんは煮くずれすることはないので面取りの必要はありません。なお、皮は皮むき器でむくと簡単です。

◆ 加熱◆
 れんこん特有のシャキッとした歯ごたえを残す為に加熱時間はなるべく短めにします。デンプン質が多いので、長時間加熱すると歯ごたえがなくなります。

◆ 茹でる◆
 たっぷりの熱湯に酢を数適加えた中に入れて、さっと手早くひと茹でします。れんこんが透き通ってきたらザルに上げて水気をきれば、サラダや和え物がシャキッと歯切れよく仕上がります。

◆煮る◆
 炒めてから煮たり、沸騰した煮汁に加えて煮ることが多く、いずれもあまり長く煮込まないことが基本です。


<栄養と効能>
 淡色野菜の中ではビタミンCが豊富に含まれていて、美肌や風邪の予防に効果があります。また、利尿作用のあるカリウムや鉄分も多く、さらに、食物繊維が多いので、高血圧予防や貧血防止にも効果があります。
 中国では、茎の部分だけでなく葉や実、花弁など、ハスのすべてを漢方薬として用いています。


<こんなこと知っている?>
 戦国時代に各地に造られた城の濠には必ずといっていいほどハスが浮かんでいました。
 早朝の水面に美しく咲くハスの花は神秘的で、昔からの民族信仰からと思われがちですが、実は戦いの場合の非常食用に栽培していたという説があります。確かに籠城した場合の食糧補給を考えるとうなづける話ですが、実際にれんこんが籠城食として使われたという話は残っていません。ただ、それ以前れんこんは薬用として珍重されていたので、城の濠だけでなく、寺の池にあるハスは人々にとって一つの安心材料だったのかもしれません。


<れんこんの穴は9個か10個>

 穴の空いた不思議な野菜、れんこん。この穴はハスの地下茎であるれんこんが、外と呼吸する為の重要なものです。そのため、れんこんの節やハスの茎にもすべてあいていて、この穴を通じて酸素を取り入れています。
 不思議な事に、この穴は太いれんこんでも細いれんこんでも、決まって真ん中に1個、周りに9個か10個空いています。