ほうれん草




アカザ科ホウレンソウ属

ほうれん草は、 野菜のスーパーヒーロー!!

 ポパイの助けを借りてまで、母親が子供に食べさせようとするのには立派な理由があります。
 ほうれん草には、体の機能を正常に保つ上で欠かすことのできない、大切な栄養素を多く含む、緑黄野菜の代表的存在だからです。

<来歴>
 ほうれん草を漢字で書くと、"菠薐草"となります。菠薐とは中国語でペルシャ(現、イラン)を指し、ペルシャからシルクロードを経て中国に伝えられた葉菜のことをペルシャの草、すなわち菠薐草と呼び、その名が日本にも伝わったと言われています。
 ほうれん草の原産地は、西南アジア、コーカサス地方やイランが想定され、それらの地域で古くから栽培されていたようです。
 日本への伝播は比較的遅く、16世紀中期に中国より伝わったと言われ、当時は唐菜(カラナ)とか赤根菜の名で各地に広まったようです。このほうれん草は、葉が細く、先が尖っていてギザギザがあり、根の赤い、今で言うところの東洋種で、これが日本の在来種となったようです。
 西洋種のほうれん草は、文久年間(1861〜1863年)にフランスから伝来し、さらに明治以降、欧米諸国から色々な西洋種が導入されました。しかし、日本人の嗜好に合わなかった事もあり、あまり普及しませんでした。
 ほうれん草が重要な野菜となるのは昭和に入ってからで、戦後はその栄養価が認められて、揺るぎ無い地位を確立するに至りました。その間に、暑さに強く収量が多い丸葉の西洋種がいつの間にか、栽培の中心となり、東洋種は徐々に市場では見る事が無くなりました。
 現在は西洋種と東洋種を交配した一代雑種が主流となり、全国各地で栽培されています。

<品種>
 東洋種と西洋種に大別されますが、現在では両者の雑種や一代雑種が大部分を占めているため、明確な区別が出来なくなっています。

★東洋種
 葉は薄く、欠刻が深くて葉先が尖っていて、根が鮮紅色である。
 西洋種に比べてアクが少なく歯切れが良い事から、日本人好みの品質である。
 東洋種のタネには二本の刺があり、一般に刺種(とげだね)品種と呼ばれています。

★西洋種
 葉に欠刻が少なく厚くて波状に縮む品種が多く、根元の赤味が淡い。
 やや土臭くアクが強いことから、食味的に問題もあるが、東洋種よりも収穫が多く、抽苔が遅いため春まき栽培に適している。
 タネには刺がなく俗に丸種(まるだね)品種と呼んでいます。


★一代雑種
 近年は両品種群間の交雑から育成された品種が多く、丸種でも葉に欠刻があったり、土臭さが少ない、両群の中間的特性を持つ品種が出回っています。


<出回り期と旬の時期>
 ほうれん草は品種改良や施設栽培の導入等によって、作型が広がり、周年出回りますが、元来冷涼な気候を好む野菜なので、やはり旬は冷え込む冬と言えます。
 冬季のほうれん草は、葉の色が濃く、甘味も増し、栄養価も夏季の倍以上になります。
 特に初霜が降りる11月〜3月頃迄が一番美味しい時期と言えるでしょう。
 とは言うものの、北海道や高冷地の夏穫りほうれん草も、雨除け栽培するなど特別な工夫が施されており必要不可欠なものです。


《産地と出荷時期》… 金沢市中央卸売市場入荷分
      (金沢市中央卸売市場入荷分)

  冬季は群馬・福岡・埼玉・愛知産が中心となります。
  夏季は北海道・群馬・岐阜産の高冷地・準高冷地や石川産中心の入荷となります。

  石川産 ― ハウス栽培 ― 鳥越・医王山地区
       ― 露地栽培 ― 金沢市内


<選び方>
 ≪葉先が黒ずんでいる物は古い証拠≫
 青葉のおいしさは鮮度の良さです。葉先がピンと張っていて、根元が鮮やかな紅色の物が新鮮で良品です。茎が細い物は葉も小さく、旨味に欠けます。
 葉が黒く変色していたり、しおれているもの、茎が傷んでいる物は避けましょう。

<保存法>
 ≪冷凍保存なら小分けにして解凍しやすく≫
 
すぐに食べない時には、ぬれた新聞紙に包んでポリ袋に入れ、根を下にして冷蔵庫の野菜室へ。2〜3日くらいなら鮮度が保てます。4〜5日なら、下茹でして根元を切り、水気を絞ってポリ袋に入れて冷蔵庫で保存します。長期保存するなら少量ずつ小分けにしてラップに包んで冷凍保存しましょう。

<栄養価と効能>
 ほうれん草には、カロチンの他、ビタミンB2・C、葉酸、カリウム、鉄分、ヨード、マンガンなど栄養素が豊富に含まれています。
 カロチンは体内で皮膚粘膜を作るビタミンAに変りますので、夜盲症・肌荒れに効果があります。また、抗菌作用や免疫力を高める作用があり、風邪の予防にも有効です。
 その他ビタミンCは老化防止、葉緑素はニコチン・アルコールの中和解毒、カリウムは高血圧予防、ビラジンという香り成分は血栓予防とたくさんの効能があります。
 なんと言ってもほうれん草の栄養成分の代表は鉄分です。葉酸と共に貧血予防に欠かす事が出来ない重要な栄養分です。
 但し、植物性の非ヘム鉄は吸収率がかなり低めで、効率よく摂るためには良質のたんぱく質である卵や魚、肉と一緒に摂る事によって吸収率がかなり上がるようです。ビタミンCとの組み合わせでさらにアップします。


<調理のコツ>
▲ ▼▲▼ アクが強いので、下茹でしてから使いましょう!! ▲▼▲▼

※洗い方
 ほうれん草の根元部分には独特の旨味があるので、切り取らずにきれいに洗って使いましょう。根元のほうには泥の汚れが残っている場合がありますので、包丁で切り込みを入れ、指先で軽くもみ洗いして下さい。
 葉がしんなりしている場合は、10分ほど根を水につけておくと、水分を吸収してバリッとなります。

※アク抜き
 ほうれん草には微量のシュウ酸が含まれています。シュウ酸はカルシウムや鉄分の吸収を阻害するので茹でて水にさらし、シュウ酸を除いてから使いましょう。下茹での方法は、たっぷりの熱湯に塩少々を入れ、根元から茹で始めます。茎を入れて30秒ほどしたら葉を入れ、箸で返しながらさっと茹でた後、冷水に取って手早く冷まし、水気を絞りましょう。

※加熱
 ほうれん草に含まれるビタミンCは水に溶けやすく、熱によっても壊れやすい性質を持っていますので、ビタミンCを失わないように短時間で茹でたりすることが大切です。手早く仕上れば歯触りが良くなり、おいしく食べられます。

こんなこと知っている?
午後2時のほうれん草は栄養価一番!
 ほうれん草の葉は、下の葉ほど葉柄が長くなって、どの葉にも日光が当たるように広がっています。
 冬の寒さに耐え、養分を蓄えているほうれん草は、冬を乗り切る活力源です。そして、「収穫するなら午後2時のほうれん草」と言う話があります。
 朝から日光を受けたほうれん草は、午後2時頃には栄養分をタップリ蓄え、そのころ収穫した物が栄養価も味も一番だといわれています。

〓〓〓〓ポパイは人気でも、ほうれん草缶は不人気〓〓〓〓
 ほうれん草といえばすぐに思い浮かぶのはポパイ。
 主人公のポパイが絶体絶命になった時、ほうれん草の缶詰をパクっと食べてアッという間にパワーアップし、悪役のブルートを倒してしまう………というアメリカの人気マンガです。
 このポパイは1929年にほうれん草の缶詰の宣伝用にテレビ放送されたもので、当初は子供たちに大人気でした。でも、缶詰の人気はいまひとつで、売上増にはなりませんでした。その原因は、同じ時期に登場したブロッコリーの人気に押されてしまったからだそうです。